
2021年01月13日 [鍼灸療法]
【 解説 】変形性股関節症

今回は立ち上がり時・歩く時・重い物を持つ時に痛みが出やすい股関節の痛みの原因の1つと考えられる変形性股関節症について現代医学と東洋医学(鍼灸)のそれぞれの観点から説明します。
■現代医学での考え方
・変形性股関節症の大半は女性が占めています。
・症状として痛み始めは立ち上がりや歩き初めに足の付け根が痛みが感じる程度ですが、股関節の変形が進んでくると痛みの程度がひどくなり、痛みが続いたり・夜寝ている時にも痛みが出てくるケースも出てきます。そうなってくると日常生活にも影響が出てきます。例えば立位時・歩行時・靴下をはく時・正座をする時・あぐらをかぐ時・足の爪を切る時などに痛みが出てしまい、できなくなってしまうケースも出てきます。
・原因は股関節発育形成不全の後遺症や股関節の形成不全といった子供の時の病気又は発育障害が約80%占めています。なお加齢による股関節が変形してくるケースもあります。
・診断方法はレントゲンでほぼ確定できます。股関節にある軟骨がすり減ってきたり関節内やその周辺に棘(とげ)みたいなものが出てきたりして痛みを助長します。最終的には、股関節にかかる負担を和らげるための骨軟骨がなくなってしまいます。

・治療法は変形性股関節症の初期のうちは痛みと上手に付き合う事が大事なので、どの姿勢をすると痛いのかを理解して、なるべく日常生活で負担のかからない工夫をして頂きます。あと肥満傾向にある人は体重を落として股関節の負担を減らすことが大事です。必要に応じて杖を使うのも良い方法です。痛みがひどい場合は痛み止めの薬を服用するのもOKです。
ただ、上記の方法ですと、股関節周辺の筋肉の低下が心配です。筋力が低下しますと余計に股関節周辺に負担が出てきて痛みもひどくなってきますので、プールで歩行訓練をして頂くと股関節周辺の筋力の維持と向上が期待できるので是非取り組んで頂けると良いです。
以上の方法でもなかなか改善しない場合は人工股関節を入れるような手術をするケースもございますが、これについては担当医師とよく相談してから決めて下さいね。
☆参照ページ
・日本整形外科学会(変形性股関節症)を参照。

■鍼灸では
変形性股関節症は「痹証」にあてはまります。これはストレス・生活習慣・過労などで内臓(特に肝臓・脾臓・腎臓)の働きが低下すると、自然界にある体に不要な物質(風邪・寒邪・湿邪の3つの邪気)が合わさったものが股関節の部位に侵入することで血行不良がおこることで痛みとして発症します。
治療方針は鍼灸で内臓の働きを良くして気血水の不足を調整した上で、体に不要な物質(風邪・寒邪・湿邪)を排出を促します。あと股関節周辺の筋肉(梨状筋など)のコリを解消することで血行を促進をして痛みの改善を図ることになります。あと筋力低下が著しい時は運動療法などを併用し筋力維持やUPを目指して股関節にかかる負担の軽減を図ります。
治療経過は変形した股関節は元の良い状態に戻ることはないことをご理解して頂いた上での治療になることを前提になりますが、痛みと変形の程度と股関節周辺の筋力の程度にもよります。一般的に筋力低下を伴わない場合よりも筋力の低下を伴う股関節痛の場合の方が治療経過が長くなる傾向にあります。