■この記事の筆者は当院の院長です。院長プロフィールはこちらへ。公開日:2022年3月25日 更新日:2024年4月30日

【 解説 】  不眠について

不眠

■はじめに

・誰もが1度は経験のある不眠。不眠はつらい症状の1つになりますね。不眠の治療は精神安定剤などの薬・カウンセリングなど様々ありますが、鍼灸で不眠は改善できるのかどうか非常に気になるのではないでしょうか。
結論として「不眠は鍼灸で改善が期待できる症状」となります。
では不眠について現代医学と鍼灸でどう考えているのか説明していきます。

現代医学では・・・・

説明
【 定義 】
・入眠障害(なかなか寝付けない)・熟眠障害(眠った気にならない)・中途覚醒(眠りが浅く何回も目が覚めてしまう)・早期覚醒(早く目が覚めてしまう)など睡眠の問題が1か月以上続き、日中の倦怠感や意欲低下・食欲低下・集中力低下などの不調が出てしまうことを言います。なお生活環境や心配事などがあって数日眠れなくしばらくすると眠れる場合は当てはまりません。定義だけでみると、睡眠時間の長い短いは関係ないというのは意外と思われる方が多いかもしれんませんね。
【 不眠症は国民病です。】
・日本人を対象にした調査で約20%の方が「熟睡できない」など不眠に悩みがあると言っています。そして加齢になるにつれて不眠症で悩む患者様も増えて、60歳以上では約30%の患者様が睡眠のことで悩んでいます。そのため通院している患者様の約5%は不眠のために薬を服用しているのです。ですから不眠症は特殊な病気ではなく国民病の1つと言っても良いわけです。

【 原因 】
・不眠の原因は1つではありません。たくさんあります。例えばストレス・身体の病気(高血圧など)・心の病気(うつ)・薬や刺激物(カフェインやニコチン)・生活リズムの崩れ(三交代の勤務など)・生活環境(騒音など)があります。
対策
【 対処法 】
・心療内科や精神科での薬の処方がすべてではありません。自分自身で行える対処法を7つ挙げていきます。すべての対処法を実践する必要はないです。まずはできることから行って下さい。

@寝る時間と起きる時間を一定にすることです。人間の体内時計は精密なものです。生活リズムが狂うことで不眠になりやすくなります。
A睡眠時間にこだわらないことです。睡眠時間には個人差がありますので「何時間以上寝たい」という目標を立てるのは止めた方が良いです。却って気になって眠れなくなるからです。
B太陽の光を浴びることです。日光は体内時計を調整してくれる方法の1つです。日光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じやすいので少しでも日光に当たると良いですね。
C適度な運動をすることです。運動中おしゃべりできるくらいの強度で軽く汗ばむ程度が良いです。激しい運動は却って不眠の原因になります。
D寝酒は良くないです。睡眠にとって寝酒は全く良くないです。寝つきは良くなるかもしれませんが途中で目が覚めてしまうことがあります。お勧めできない方法ですね。
E自分流のストレス解消法でなるべくストレスをためないように工夫して下さい。
F就眠前にはリラックスできるような環境を作って下さい。例えば自分の好きな音楽を聴く。ぬるま湯で下半身浴をするなどでリラックスしてなるべく副交感神経優位にして下さい。

【 最後に 】
・人間、「眠れないとまた眠れなくなるのでは」とか「早く眠らないとダメだ」と考えがちですが、焦れば焦るほど不思議と人間っていう動物は眠れなくなる傾向にあります。ですからそのような場合では思い切って寝るという行為を止めて眠くなるまで起きておくことの方が却って良い結果になる場合があります。もう1つは眠れなくれても日中はなるべく普段通りの生活をしてどうしても眠い時は15分ほど昼寝をして調整をとると良い場合があります。
薬を服用することに抵抗を持つ人が見えるかもしれませんが、短期間であれば現代の睡眠薬では副作用が少なくなっているとのことですので、一度専門の先生に診て頂くこともありだと考えます。

鍼灸では・・・・

鍼治療
【 原因 】
ストレス・生活習慣などにより内臓の働きが低下した結果以下のような状態をたどって不眠になります。
@血(現代医学で言う栄養分)が不足もしくは血の流れが悪くなることで肝臓に血液が戻らないことにより不眠になります。
A身体を冷ます物質の量が減ったこと(腎虚)により身体を温める物質の量を抑えきれなくなったことで身体に熱を持ち、それが心臓に及ぼすことで不眠になります。
B不要な水(湿邪)が発生することで不眠になります。
【 施術方針 】
内臓の働きを改善するのは共通事項になります。あとは原因によって変わります。
・血の不足や流れが悪く不眠になった場合は血を補うもしくは血液の循環を改善することです。
・身体に熱をもったことにより不眠になった場合は身体を冷やす物質を補い身体を温める物質と同等の量になるよう治療をします。
・不要な水で不眠になった場合は水の代謝をよくする治療をして不眠を改善します。
・上記に加えて頚、肩、肩甲骨周辺の筋肉のコリを緩めることです。筋肉のコリは身体が緊張している証拠です、緊張していると睡眠を妨げる1つの原因になります、鍼や灸で筋肉のコリを緩めることで身体の緊張をほぐして睡眠しやすい状況にしていきます。

【 施術経過 】
・個人差はありますが、施術を受けた日は睡眠が良くとれたと言われる方が見えます。
・身体の緊張が取れてくるので施術中にウトウトされる方も見えます。
・不眠を改善するには一般的に中長期的な施術が必要になります。悪い習慣が身についてしまっているのでどうしても時間がかかってしまいます。
・鍼灸で定期的に個々に合った身体の調整をすることで不眠になりにくい身体にすることが期待できます。

【 その他 】
・不眠治療時は睡眠薬を飲むのを止めた方がいいかと聞かれることがよくあります。これについては担当の医師に相談して決めることが大前提になりますが、急に睡眠薬を止めるとまず眠れなくなりますので徐々に薬を減らしていく形になることが多いです。減らしても依存性の作用があり、なかなか睡眠状況が改善できないことも多々見られます。理想は薬を飲む前に来て頂ければ改善しやすいですね。
・身体を動かして疲れさせたら眠れると思い運動されている方、それは良くないです。東洋医学(鍼灸)では身体を動かすには気と共に血も必要とします。「疲れさせるまで身体を動かすと余計血が消耗し不足します。血が不足したら余計睡眠を取ることができません」ので注意して下さい。
【 セルフケア 】
・当院、院長がおススメするセルフケアを3つ挙げますね。
足三里(あしさんり)穴
足三里穴
足三里(あしさんり)穴は胃経のツボで非常に大事なツボでもあります。主な作用は気を増やして血を増やすことです。血が不足して眠れない時に効果的なツボになります。
内関(ないかん)穴
内関穴
内関(ないかん)穴は心包経のツボです。主な作用は心臓の働きを調整することです。内臓の働きが低下したことで心臓の働きに影響が出た時に使うと効果的です。
膻中(だんちゅう)穴
膻中穴
膻中(だんちゅう)穴は任脈のツボです。主な作用は過度なストレスにより眠れない場合に使うと効果的なツボになります。
【 症例 】
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【 詳細ページ 】
東洋医学の考え方

まとめ

・不眠の対処法はたくさんありますので個々でこれならできそうなことから行えばOKです。
例えば生活習慣の見直し・自分にあったストレスの解消法・不眠を過度に気にしない・セルフケアで灸をする・鍼灸マッサージで身体の緊張を取る等

・激しい運動は控えて下さい。余計に眠れなくなる場合があるので。軽いじわっと汗をかく程度の運動でOKです。

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